9月5日にファーストアルバム「STANDARD」をリリーするトリップフォークバンド「conchill」の柴田さんにインタビューをしてみました。このバンド、リリース前からすでに各方面で話題となっていますのでみなさん要チェックです。では、はりきってどうぞ。(インタビュー:ふじもとみかこ)

conchill『STANDARD』
TICU-001 / TIMECUT LABEL / 2008/09/05(FRI) RELEASE
01 水の屋根
02 tree
03 短い蔓のように
04 timeboat
05 小雨
06 antique
07 sweet
08 happiness in the dark
09 草原から海へ
10 哀しい盾
11 greenland
■自己紹介をお願いします。
conchillは、男女混声、アコースティクギター、エレキギター、ドラムというベースレスの四人編成バンドです。曲はぼくとギターの角田くんがそれぞれ作り、歌詞は全曲ぼくが担当しています。今年の9月5日に、デビューアルバム『STANDARD』をリリース予定です。
■アルバム聴かせていただきました。さわやかな男女ヴォーカルのバンドと思いきや、ドラムがクラブっぽいリズムだったり、ギターのリフがすごく印象的だったり、美しいメロディを優しく奏でる歌声、幅広い世界観を感じる事ができて「トリップフォーク」と言われる理由がとてもよくわかりました。結成当初からこのスタンスで曲を作ってきたのでしょうか?
実は、結成当初はベースがいて、通常の編成で一度だけライブをしたことがあるんです。そのライブのあとに、デモ音源を作ることになったんですが、ライブも音源も、どうしても閉塞感を抜け出せなかった。元々、メンバーはそれぞれ活動暦があったので、楽曲のクオリティは決して低くない。けれど、何か物足りなかったんです。そこで一夜にして、ぼくがメンバーに「明日からベースレスだから」と伝えて、今の編成になりました。ベースの女の子をコーラスのみにして、楽曲もアコースティックギター主体に変えました。もう感覚ですね。ベースレスは、難しさもありますが、個々の楽器への意識がとても高くなる。当然、お手本となる音楽はありませんし、ドラムなんて同じリズム隊がいないわけなので、非常にやりづらさはあったと思います。それでも、自分たちで壁を越えてきた。音量、音質、フレーズ、全ての楽器がバランス良く存在しないと成立しない。音楽的にはとてもシンプルですが、譜面上でコピーできても、誰にも決して真似はできない。そういう音楽だと思います。
■これまでにもリリースのお話があったとうかがいました。あえて自主レーベルを立ち上げ、そこからリリースした理由などあれば教えてください。
基本的には、ぼく自身がデザインやレコーディング関連の仕事を頼まれることが多くなってきたので、その窓口としてレーベルは立ち上げました。conchillに関しては、特にこのレーベルからリリースすることに強いこだわりを持っているわけではないんです。ただ、今回に関しては、自分たちでやりきりたかった。最初の作品なので、とにかく時間をかけて、納得のいくものを作りたかったんです。とは言え、自分たちでリリースをする場合には、自分たちで線引きもしなくてはいけない。世に出していい作品かどうか、自分たちで責任を持つ。それができて初めて自主の音楽レーベルというのは成り立つと思うんです。conchillは、メンバー全員がそういう意識を強く持ってくれているので、今回自信を持って自主レーベルから世に出せる素敵な作品ができたんじゃないかと思います。
■「アトリエ」という自主企画では数々の表現者とご一緒されていますが、そういうスタンスはインディーズで活動しているバンドでは少ないと思います。これは柴田さんがデザイナーとしても活動されているからでしょうか?こだわっている部分、conchillの姿勢などを教えてください。
本格的にデザインの仕事を始めたのは、ほんの1,2年前のことなので、デザイナーとしての活動と「アトリエ」には、直接の関係はありません。conchillのような音楽は、照明や会場の雰囲気によって大きく聞こえ方が変わります。メジャーのアーティストは、様々なやり方で空間を演出しますが、conchillにはまだそうした環境はない。でも、だからといって、何もやれないのは悔しい。お客さんには、一回のライブで最低でも2000円から3000円のお金を出してもらうわけです。数ある遊びの選択肢の中から、ぼくらのライブイベントを選んでもらう。そんなときに、その日一日をより楽しんでもらうために努力をするのは、当たり前なことだとぼくは思っています。アートとかデザインとかはその結果であって、目的ではない。なので、アートのアの字もない「アトリエ」であってもいいんです。当日は、必ず出演順と出演者のプロフィールを載せた手作りのパンフレットを用意しますが、そうしたものを丁寧に作るというのも、「アトリエ」では、とても大切な作業なんです。たかが、パンフレット一つなのかもしれませんが、そうしたものでも、開演前のテンションは間違いなくあがりますからね。
■コーラスの品田さんは国内外でも支持されているポストロックバンド「Yucca」の、ドラムボーカルとしても活躍されていますが、彼女をコーラスに選んだ理由は?
ぼくがYuccaを『アトリエ三回』というイベントに誘ったのがきっかけです。ちょうどそのころ女性コーラスを募集していて、イベント後に、彼女のほうから声をかけてもらいました。Yuccaは初めてライブを見たときから、とても好きなバンドでしたし、本当にうれしかったです。実は向こうも同じくらいconchillのことを気に入ってくれていて、初めてのスタジオではとても緊張していたそうです。彼女は不思議な人で、音楽でも、性格でも、パフォーマンスでも、メンバーの短所を消し、長所を引き出してくれるような人だと感じました。それで、正式にコーラスをお願いしたと。メンバーになってからは、信じられないくらいすぐにバンドに溶け込んでくれて、こういうめぐり合わせはあるものなのだなと今でも不思議に感じます。
■柴田さんは、自主レーベルオーナー、今回のアルバムのエンジニアなど務め、総監督といったポジションでいらっしゃるわけですが、周りをひっぱっていく上での苦労やプレッシャーなどありましたか?
苦労はありますけど、プレッシャーはないですね。この程度でプレッシャーを感じていたら、もっと上にはいけないでしょうし、今プレッシャーを感じるようであれば、バンドの人間関係がうまくいっていない証拠ですから。むしろ、自分で自分の演奏を録音するのが一番大変でした。というか、それだけは無理ですね(笑)。いずれにせよ、ぼくが引っ張っているようで、みんなにも少しずつ背中を押してもらっているんですよ。
■ギターの角田さんも他のバンドで活動されていたり、ドラムの加藤さんもドラマーとしていろいろなミュージシャン(プロ、インディーズ含む)の方とご一緒されているとうかがいました。この4人が同じ方向で進み続けることはなかなか難しいような気がしますが?いかがでしょうか。レコーディング秘話などあれば聞かせてください。
私生活における環境の変化があれば別ですが、音楽的な理由でconchillのメンバーが別々になるというのは考えにくいですね。結局、conchillというバンドが音楽に対してものすごくストイックであり、音楽的にも人間的にも成長を求められる場だということをみなよくわかっていますから。ジャンルも「トリップフォーク」というのは、今のconchillのわかりやすい代名詞でしかなくて、明日になったらまったく違う音楽を作っているかもしれない。四人でできるものなら何でもconchillの音楽であって、もう少し広げて言えば、ぼく含め、それぞれの創作活動も全て含めてconchillの音楽なんです。そう考えれば、個々の活動にも興味が深まりますし、それぞれ切磋琢磨しているという意味では、四六時中仲良くしているよりも、ぼくは好きですね。
■柴田さんがご自分で一番好きな曲を教えてください。
今回はフルアルバムなので、最初と最後の曲は、特に気に入っています。「水の屋根」と「greenland」ですね。ただ、曲に対する想いを語れば、どれも同じだけの量の言葉が出てきます。不思議なもので、曲にタイトルをつけると、命を吹き込んだ感じがするんですよね。そうなると、どんな曲であれ、ある時間、ある場面では一番好きな曲になりますね。
■リリース後のライブスケジュールや展望などあればお願いします。
9月13日に、YuccaとApril showers bring May flowerの主催イベントに出演します。それと、10月に『STANDARD』のリリースパーティーを開催します。これはまだ詳細を発表できませんが、すごいことになると思います。
■では、最後に本サイトをご覧のみなさまにメッセージをお願いいたします!
conchillというバンドの存在を知らない方もきっと多いと思います。ですので、試聴でも何でもいいので、ぜひ今回のデビューアルバムを機会に、一度conchillの音楽に耳を傾けてほしいです。
本日はありがとうございました。
■バンドプロフィール

バンド名「conchill」(コンチル)。2005年より東京にて音楽活動を開始。男女混声、アコースティックギター、エレキギター、ドラムによるベースレス編成。フォーク、エレクトロニカ、Hip Hop等メンバーのルーツとなるジャンルをバンド独自の解釈で色付けし合い、邦楽洋楽の枠を超えた時代性豊かな音楽を確立。叙情的な歌詞表現や、楽曲に対するストイックな姿勢は、様々なアーティストからも高く評価されており、良質な日本語ポップの継承者として、今なお進化を続けている。
■メンバー
Yusuke Shibata … Vocal, A.Guitar, E.Guitar, Effects
Tomoyuki Tsunoda … E.Guitar
Ayako Shinada (Yucca) … Chorus, Effects
Takayuki Kato … Drums
■リンク
公式サイト:http://www.conchill.com/
レーベル:http://www.timecut-label.com/
